ホルモン補充周期
胚を凍結することで、ホルモン・子宮内膜の状態を整える、胚との時間的なズレを解消することが可能になりました。では、どのようにしてホルモンや子宮内膜の状態を整え、どうやって胚移植の日を決めていくのでしょう。
凍結した胚を融解し移植する日を決定するには、3つの方法が考えられます。
1)自然排卵により排卵日から胚移植日を決定する方法
2)クロミフェン、hMG−hCG療法により排卵を起こしたのち、排卵日から胚移植日を決定する方法
3)ホルモン補充周期を用いて、内膜の黄体化を行った日より胚移植日を決定する方法
1)、2)の方法では、正確な排卵日の決定が難しく、最も正確な着床日を決定するのは困難です。また2)では、クロミフェンの副作用である内膜が薄くなるという欠点が補えず、hMG-hCGでは卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクが高まり、胚を凍結した意味がありません。また子宮内膜の着床ポイントが1〜2日、前方へずれる傾向があり、胚の発育が着床のポイントに間に合わないことが考えられます。
それに比べ、3)ホルモン補充周期を用いる方法は、
- 事前に胚移植日の決定ができる
- 子宮内膜を厚くすることができる
- 内膜の着床ポイントを後方に1〜2日ずらすとともに、幅を広げることができ、融解後の胚の発育が遅い場合でも着床させることができる。
という3つのメリットがあげられます。またこの方法でのデメリットは、薬剤を使用する点にあります。
ではホルモン補充周期によって、どのようにホルモンや子宮内膜の状態を整えていくのでしょうか? 方法は2つあります。
1つは主に貼り薬を使用する方法です。
貼り薬はエストラジオール(製品名:エストラーナ)が、天然型卵胞ホルモンを有効成分とし、皮膚から直接吸収されます。これにより子宮内膜の増殖効果は確実で、また肝臓への負担が少ないことがメリットです。
2つ目は内服薬のエストラジオール(製品名:エストレース)も同じく天然型卵胞ホルモンを有効成分とし、子宮内膜の増殖効果を目的に服用します。現在、エストレースは日本での認可がないため輸入に頼る現状ですが、当クリニックでは、安定供給できる在庫とルートは確保されています。
貼り薬または内服薬で子宮内膜を増殖させ、ジドロゲステロン(製品名:デュファストン)で子宮内膜を黄体化していきます。後をすぐ追うようにノルゲストレル・エチニルエストラジオール(製品名:プラノバール)で子宮内膜の蠕動運動を止める子宮内膜を維持、はがれにくくし、胚移植日に備えます。